1 二限目の重役出勤
太陽が、冷えきっていた朝の空気をようやく温めだした頃、アイツはやって来る。 古典の授業を子守歌にしながら、まどろんでいた私を目覚めさせる、小さな空気の変化。もう、みんなその光景に慣れてしまった。後ろ側のドアが、遠慮なく、けれども静かに開く。 古典の井藤が眉間に皺を寄せている。半分呆れたように、半分、まるでそれが決まりきった挨拶であるかのように、またお前か、そう言った。 「おはよう」 隣りに座りながら、笑顔で挨拶。 「うん」 素っ気無く返して、聞いてもいない授業に、さも集中しているかのように、教科書に目を落とした。 「今日はなんだったの」 聞き取れるギリギリの音量で尋ねた。 「うん。通りがけの銀杏が綺麗だったから」 ふんわり微笑んで、アイツは話す。いつものように家を出たあと、銀杏並木の公園で、太陽が朝靄を溶かしていくのを眺めていたのだと。金色に輝く銀杏が、青空に映えて、つい見惚れてしまったのだと。 そう、コイツはこういうヤツ。それでいて私より成績がイイから、小憎らしい。 「それで、堂々と重役出勤って訳」 「? うん?」 皮肉を込めて言ったのに、バッチリの疑問系で返してくるから手に負えない。さっきと同じ、柔らかな笑みを浮かべたまま、こっちを見返してくる。ああ、なんて大きな瞳。ウラヤマシイこと。 「いいわねぇ、重役出勤でも関係ない人は」 「そう? 僕、ちゃんと学校に来てるよ?」 遅れて来ているのだから、意味が無いんだけど―― 天然って、きっとコイツのためにある言葉。どこか憎めない、その微笑みに、みんななんとなく許してしまう、お得な奴。 ため息を一つ。 窓の外へ目をやれば、すっかり高くなった秋の空と並木の銀杏。 清々しいまでの晴天に季節の変化を感じた。 「あー、そういえば」 まだ終らない授業をそっちのけにして、両手をポンと打って、こちらを向いてきた。井藤がイタイ視線を投げてきたのに気がついたのか、さすがに囁き声になって、それでいて懲りずに話しかけてくる。 「お昼から約束してたんだ。ねぇ、一緒に行こう?」 「約束?」 首を傾げて聞き返すと、そう訊かれるのを待っていたかの様に、嬉しそうに続けた。 「銀杏の公園に、いつもいるお婆ちゃんとね、一緒にお弁当食べる約束をしたんだー。お花見じゃなくて、お銀杏見だよ」 一緒に行くよね――瞳を輝かせて、見つめてくるから、笑ってしまった。私がノーと言うとは思ってないらしい。コイツの笑顔を見ていると、たまにはそれもいいかと思えてくる。 「重役出勤に、重役退社って訳だ」 「いいんじゃない? こんなに天気いいんだよ? 勉強してるのもったい無いじゃない?」 「・・・まぁ、たまには、ね。付き合ってあげてもいいよ」 私のその言葉を聞いた時のコイツの笑顔は、今日の空より眩しかった。 ------------------- はい、本館が更新停滞中なので、携帯で作文(笑) 10のお題をお借りして、チャレンジです☆ 私の高校の時は、生徒の 「先生、天気いいから、外行こう!」 という言葉で、実際に校庭の芝生の上で、授業をした思いでがあります。 割と適当に生活してましたが、アレはリアルに思い出せますねぇ~(*´∀`*) 今通ってる学校も、銀杏のきれいなところがたくさんあって、この間、写メ撮りまくってて、遅刻しそうになりました(^_^;) >一日を想う10のお題配布元:水影楓花 #
by tr20-mkco
| 2005-11-07 17:31
| 走り書きネタ帳
こんにちは♪
お昼ごはんは一限終わってすぐに食べました、藍羽です。 学校のパソコンはとってもスムーズタイピングで、ストレス解消できてGOOD☆ バイト先でもキー坊を打ちまくるので、とっても快適です~(仕事自体はまぁ、いろいろですが;) 前回の投稿に、コメントがついてるなぁ~と思ったら、 母上でした。 ぁ~う(ノд`)みつかっちったvv しかも、うちのキー坊がご機嫌斜めなのを知っていて、無謀にもコメントつけようとして、「p」のみ投稿って、一瞬イヤガラセかと思いましたよ(笑) 本当、早いうちに修理に出します。今度こそ。でもなぁ~閲覧するだけでも、ネットが見れるので、まだ・・・いいか・・・ いや! いつまでもブログのみ更新というわけにもいくまい! 連載中の小説も全然終わってないしな(笑) そうそう、小説といえば・・・・ 続きを読む。 #
by tr20-mkco
| 2005-11-07 12:41
| 徒然書
後悔したくないと思いながら 後悔し続けている 自分で選んだ道でさえ 確かな答えさえ見出だせず 今も問いかける日々 納得のいく選択は 次の瞬間には 「もしも」に変わる 限られた時間の中で 手探りで進むしかない私は 後悔を畏れたことを 後悔している -------------------- 暗くてすいません~(>_<) 写真がきれいだったので、 ちょっとした詩を投稿☆ ここ、通ってる学校の敷地です。 無駄に広い敷地ですが、こういう景色は割と好きです♪ でも、朝は北京になります(笑) #
by tr20-mkco
| 2005-11-03 21:46
| 走り書きネタ帳
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by tr20-mkco
| 2005-11-01 13:09
| 徒然書
サスペンスや脚本のイメージが強かった(←個人的に^^;)、野沢尚の
龍時 01-02 を、その表紙に一目惚れして、思わず衝動買い・・・ならぬ、衝動借りをして読みました♪ 最初の一行目で、この本を「買わなかったこと」を激しく後悔(笑) で、 翌日、速攻で02-03とあわせて、購入しました☆ 初めて読むスポーツ小説が、この本で良かったv そして、作者急逝のため、この物語の続きが読めないことが残念です。 ここからさき、例のごとく独断と偏見と妄想混じりで、ネタバレの可能性大な感想を繰り広げたいと思います!! 続きを読む。 #
by tr20-mkco
| 2005-10-26 14:11
| 読書感想
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