はい、久しぶりの読書感想文です。 今回は中沢けいの楽隊のうさぎ 中学校の吹奏楽部の物語。 最近、吹奏楽関連の映画とか、小説とか、少しずつでているようですが、実は私も吹奏楽部員でした。 なので、この話はかなり共感できるというか。 以下、例の如く独断と偏見で突っ走る感想です。 簡単なあらすじ 小学校時代からいじめにあい、心を閉ざして何も感じないようにする術を身につけていた少年・克久。 彼は中学入学前の春休み、近所の公園で一匹のうさぎを見かける。 そして、中学校ではひょんなことから吹奏楽部で打楽器を担当することになり・・・ 克久の所属する吹奏楽部は全国大会常連の強豪校。 朝から夜まで吹奏楽、そんな部活です。 50人編成が、3年生の大量引退によって、大会出場の危機。そんな時にかなり強引?な勧誘で成り行きで入部してしまった克久と吹奏楽部員達、また学校のクラスメートやいじめっ子、両親といった克久を取り巻く人々との物語です。 中学校の男の子らしい、というか、私自身かつて感じたようないろいろな事、また今だからこそハッ∑( ̄□ ̄)とさせられるような、的確に的を得た表現。鋭い著者の観察眼には感嘆させられます。 この年頃にありがちないじめの問題やクラスメートとのかかわり、親との接し方の変化・・・シリアスになりすぎず、けれども冗談や茶化す雰囲気を感じさせずにさっぱりと伝える。 なかなかできない事だと思います。 けれども、やはり物語の大部分を占めるのは吹奏楽部の情景。 そして、これこそ私が最も感動した部分。 克久はパーカス(打楽器)なので、基礎練習はメトロノームに合わせて机を叩くだけ。はたから見ればたったそれだけのことを、克久の内心を織り交ぜながら、その基礎練習の中から生まれてくる進歩の過程や、音色の違いを絶妙な言葉遣いで表現しています。 そして、放課後の吹奏楽部の練習風景も、多分どこの吹奏楽部でも見られるような光景をしっかりと描いていました。 空き教室を使ったパートごとのロングトーン。他の楽器のロングトーンに応えるように他の教室から、違う楽器の音色が同じようにロングトーンを繰り返す。 パート譜をもらって、パート練習。曲の全体がつかめない。 合奏。初めて曲の全貌がおぼろげに見えてくる。けれども音はバラバラ、一つ一つの音色も粒がそろわない。ところが練習を繰り返していくうちに全体が一つにまとまっていく。 指揮者である顧問が要求する音、音色、という部分で表現しなければならないから、その求める音をいかにして出すか。 そういうところは自分にも覚えがあるので、とても懐かしくなりました。 あ、ちなみに私がいた吹奏楽部は一番多い時で部員が8人、という超!少人数な部活でした。おかげでみんなものすごい仲がよかったですv ロングトーンはもちろんやりましたが、あんまり真剣じゃなかったなぁ~^^; 何よりメロディーを奏でられるのが楽しくて。部員が少ないから全員がメロディーを担当するような曲の構成になって、ベースラインやセカンドもしなきゃならないので、ある意味休んでる暇なんて無いんです。 金管、木管それぞれ一人ずつ、という編成だから、音量や音色、ピッチを合わせたり、もちろん一つの音が欠ければ曲の雰囲気は全く変わってしまいます。 でも音楽やってるときはすごく楽しかった。 今でもその感覚は憶えてるし、機会があればまたやりたいと思う。 少人数の編成だとどうしても迫力に欠けてしまうところがあるんですが、少人数の学校同士が集まって、合同演奏をすることもありました。 そうすると、それはそれですごく楽しいんです。後ろから、横から、音がぶゎ~っと前に溢れていく感じ。体が開くんですよ、うまくいえないんですけど。 少人数の時は顧問もピアノで参加してるのですが、大編成になれば指揮者が目の前に来る。 すっと指揮棒を上げた時の、あのシン、として張り詰めた空気、曲の出だし、全員が同じタイミングでふっ、と息を吸う時の、スタートの合図が鳴らされる直前のような、ワクワクするような、緊張するような、そんな感じを、この小説はものすごくリアルに表現できていると感じました。 そして、一曲一曲の情景もよく目に浮かびます。 曲に表現されている物語が、小説の中で再現されています。「のだめカンタービレ」でもよくありますね、曲が表現しようとしているイメージを絵で再現する、というあれを文章で、やってしまっているのです。本当に凄い!! 舞台に立ち、演奏が始まる前、演奏中、演奏後のあの描写はすばらしいの一言です。吹奏楽をやったことがある人なら、誰でも共感できると思う、そんな作品。 ちなみに、私の最後の合同演奏はかの有名なラヴェルの「ボレロ」。 打楽器から始まるこの曲は、なぜか全てのパートがきっちり一小節ずつずれるというとんでもないでだしで始まり、最後はぴったり終わるという狂異の(笑)演奏となりました。 いまだに音源を持ってますが、ものすごく気持ち悪い感じなのにどこがどうといえない不可思議な曲となってます。 演奏後に校長が「初めて聞きましたが、感動しました」と言うようなことを言っていて、本当の事は言えずじまいでした^^; とにかく、初めて他校との合同演奏で我らが顧問が指揮を執るというので楽しみにしていたら、そんなトンデモ演奏になってしまったために、途中から(というか最初から)指揮者が大きな声で主旋律を歌う、という光景を見ることができました。 一人の力では一度狂った歯車は元に戻せない、そんな様を生で見せ付けられましたよ☆ もちろん、客席からは見えなかったんでしょうけど(苦笑) これが本当のボロ・ボレロ(笑) タイトルにある「うさぎ」は目立たないようでかなり重要なキャラクターになります。 克久にとって「うさぎ」がどんな存在なのか、そんなことも考えながら読むとまた一味違うのかも、と思ってみたり。 10月20日~10月23日 ★★★★
by tr20-mkco
| 2006-10-24 23:48
| 読書感想
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